ニアデス、くちびるへ

ロドは親友を見つめた。今日はそんな気分だった。ロドの目に親友はそこらへんの女のように映る。ただロドにとってのそこらへんの女は著しくロドの商品だから、親友もまた親友でなかったら一体どれくらいの値だろう、とか考える。
ロドの目が親友の空虚な瞳から離れて下へ向かう。親友の胸はそれなりの大きさで、金持ちが好きそうなボリュームはなかった。ロドは自分の手を基準に大きさを予想してみて、親友の胸は自分の手にちょうど良い気がした。
ロドの目が胸から離れて顔へ戻ると、親友と目が合った、かのような錯覚だった。親友の目は何も映していないがすべて見透かしている。その目がロドは少し気に食わなかった。ロドにとって女の目が恐怖や快楽に潤んでいないのは気に食わないことだった。
親友はピネに抱きつかれて色んな所を触られている。これが親友の中にいる死神だったらピネはぶっ殺されているだろう。ついでにロドも殺されかねない。
親友の中の死神は、ロドが嫌いなようだ。それがこれからロドがすることを察知しているからなのか、死神いわく“俺の肉体”を守ろうとしているからなのか。ともあれ死神の気持ちは親友には届かないだろう。報われないだろう。ロドはそう確信している。
ロドの目が親友の唇を見つめる。そんな気分だった。


20100207

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