喰世王のひとりごと

 レナ様を殺しただけなのに、どうしてこうなってしまったのだろうかと喰世王は考える。

 ギグが力をやるというので、試してみたいと思った。目の前に、レナ様が悠然と微笑んでいて、俺の体は勝手に動いていた。ダネットの叫び声にレナ様は困惑した表情で、俺を見つめた。
その目がどこか失敗してしまったとでもいうような、思わぬミスに驚いた表情に見えた。その表情に俺はなぜかすこしざまあみろと思った。

 ギグの力を利用するために俺は育てられたと知った時だって、そんなもんかと思った。愛情とか信用してなかったし、友情も、結局は、と考えてしまう。ダネットは俺が間違った方に行かないようにするための、友情の刷り込みだったんだろう。残念ですが、な結果だけど。そう考えると、俺はレナ様が嫌いだったのかな、とも思ったけど、やっぱり違うと思った。
 育ててくれたことには感謝してるし、育てた理由にはちょっと腹も立った。でもそれはレナ様を殺したからもう問題ない。
 じゃあなんで今も俺はレナ様が嫌いなんだろうと思ったけど、これは生理的に嫌いということなのかもしれない。

 俺は多分狂ってるけど狂ってないんだと思う。壊すのは楽しいかと聞かれたら、楽しいと答える。けれどずっと壊していくかと言われたら、疲れるからやりたくないと答える。きっとそういうことなんだと思う。

 なんのために、とよく俺が殺した人間が叫んだ。なにがしたいんだ、俺を邪魔する人間が聞いてきた。俺はそう言ってきた人間を斬り殺しながら、考える。
 きっと、俺はひとりになりたいんだ。

 俺を愛してると言うレナ様や俺をすべて知っているような顔をするダネットや、俺と世界を操ろうとするロドや俺と世界を壊そうとするギグがどうしようもなくうっとうしい。
だから俺はひとりになりたい。
 あらゆる生物を殺して、あらゆる無機物を壊して、あらゆる神を殺して、俺はひとりになって、
ひとりになって、
………

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