光あれかし

ごきげんようレハト様。
サニャはもう山へ至りましたか?
レハト様はお忙しいから、サニャは手紙を書きました。昔レハト様に教えていただいた文字で手紙を書くのは楽しいです。文字、汚くてごめんなさい。文法、間違えていませんか?もし違っていたら、教えてほしいけれど、レハト様の所へこの手紙が着く頃には、サニャはもういないでしょう。

レハト様にはたくさんの秘密がありましたね。 どれもサニャには難しくてわからないことだらけだったけど、そのなかでも一番の秘密を、サニャは知っています。

それは、レハト様がサニャの村を潰したこと。

驚きましたか?
レハト様の驚く顔が見れないのがとても残念です。
誰が教えたわけでもありません。ほんとうに、偶然知ったのです。

でもいいのです。
サニャはレハト様を許します。悲しくないわけではありません。憎いと思わなかったわけではありません。
ただ、レハト様がサニャの村を潰したと知ったとき、不思議と納得してしまいました。おかしな話ですね。
今まで疑いもしなかったことが翻されても、サニャは戸惑いませんでした。

サニャは幸せでした。そう何年も共にいることはできなかったけれど、サニャはたとえレハト様に憎まれようとも、レハト様を愛した日々をうらみません。
むしろ幸せだったと思います。

レハト様がなにを思って私を娶り、私の村を潰そうと思ったのか、サニャには分かりません。
寂しかったのでしょうか。
悲しかったのでしょうか。
悔しかったのでしょうか。
きっとどれも違いますね。

サニャがレハト様の侍従としてレハト様と会ったときから、レハト様はサニャが憎くて、サニャはレハト様に憧れていました。
レハト様は疑い深いですから、きっとお信じにならないでしょう。
でも、私はそれが嬉しい。
サニャがレハト様を許すのを、レハト様が理解できないように。レハト様もサニャの分からないところがあればいいと思います。
それがサニャの最後のわがままです。

愛しています。レハト様。

20100801

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