ざんげの値打ちもない


#どこ?どこ?

 ハイラが仲間の衛士と世間話をしていると、訓練場の入り口に見知った人物が現れた。城に突如として現れたもうひとりの寵愛者ことレハトだった。
 訓練場にはにわかに緊張が走ったが、レハト本人はそんな空気を感じ取った様子は少しもない。彼が訓練場に通うようになってしばらく経つのだから、いい加減に慣れればいいのにさぁ、とハイラは毎回思ったが口にしたことはなかった。レハトはぎこちない動きで訓練を続ける衛士たちをくぐり抜けながら目線をきょろきょろと動かし、目当ての人物を探している。
「あいつ今日警備だろ」
「誰か教えてこいよ」
 仲間たちもレハトの動向を見守っていたらしく、責任の押し付けあいを始めた。寵愛者というだけでも腫れ物扱いは必至だというのに、かの寵愛者様は先月の御前試合で優勝を勝ち取っていた。
「なんで来るかね」
 まぁそう言うな、とハイラは仲間のこぼした言葉を心の中で宥めた。もちろん口にはしない。
 ハイラは、自分がしゃべるだけが能の、軽薄な男だと思われている自覚があったが、人が思っている以上に沈黙を尊んでもいた。
「グレちゃんに会いに来てるんでしょ」
 当たり障りのない返答をすると、そういうことじゃなくてさ…と不満げに返された。
 が、続いた言葉は想像とは違った。
「ていうかさ……こっち、来てないか」
「やっぱそう見える?」
 先程から目線が合うような気がしたからまさかなとは思ったが、改めて指摘されるとそうかあ、とハイラは思った。恐れ多くも私めは、かの寵愛者様に顔を覚えられているのであった。悲しいね。
 巻き込まれたくないとばかりに、脇腹を小突いて去っていく仲間たちの情の薄さに感心していると、件の寵愛者様は目の前に立っていた。口をぱくぱくと開け閉めして、ハイラにどう語りかけようか悩んでいる様子だ。
「どうも、グレちゃんなら今日はいませんよ」
 ハイラが先んじて返答してやると、レハトは表情に驚いた色を一瞬浮かべ、眉を吊り上げた。どうやら質問する前に答えられたのが気に食わないらしい。寵愛者といえどもこうした反応は年相応だ。ハイラは微笑ましさすら感じた。
「先月御前試合だったでしょ、その埋め合わせですよ。どうしても会いたいなら正門に行ってみたらいいんじゃないですかね」
 行った所で追い返されて終わりだろうが、グレオニーのことだから真面目に対応する可能性も無きにしもあらず。とにかくハイラの適当な言葉にレハトは晴れやかな顔を浮かべて、そうすると言った。
「ありがとう、思いつかなかった」
 垢抜けない容貌で素直に感謝を述べられ、ハイラの生まれ持った毒気はわずかに抜けたような気がした。まるでグレちゃんと会話してるみたいだよ、とハイラは少しおかしく、つい口が滑る。
「いいんですよ、ところで先月の御前試合は優勝おめでとうございました。さすが寵愛者だってもっぱらの噂ですよ」
 皮肉を込めたつもりだったが、鈍感さもグレオニー寄りなのかレハトは照れたように頬をかいた。褒められ慣れていないのか、目は疑わしそうにハイラを見返す。
「嘘なんか言ってないですよ」
「……それ、グレオニーも言ってた?」
「グレちゃん?」
「うん。私のこと…す、すごい、って」
 頬を染めてうつむくレハトをハイラは訝しげに見つめた。
 グレオニーは屈託のない人柄だが、こと試合に関して人を称賛することは少ない。御前試合で負けが続くようになってからは余計拍車がかかっている。フェルツが慰め、ハイラが適当に発破をかけでもしないと、永遠に寝台から起き上がってこないときもあるくらいだ。
 そんなグレオニーが、自分より年下で、剣を握ってわずか一月で優勝するようなレハトを褒めるだろうか? そこまで考えてハイラは、グレオニーが最近レハトの話題を出さなくなったなと思いかけたが「ねえ」という声に思考は霧散した。
「あ、ああ。なんですっけ」
「…もういいよ、正門行く」
 レハトはそう言い捨て、踵を返して去っていった。その後ろ姿を見ながら、ハイラは自分が先程なにを考えていたのか思い出そうとした。だが、すぐにやめた。
 自分には関係のないことだからだ。


#水鏡

 衛士を辞めてから、ハイラはフラフラと暮らしていた。社交界に出て浮名を流してみたかと思えば、父親の伝手で貴族の従者をやってみたり。どれも長続きはしなかった。
 貴族の四男坊にふさわしい暮らしだった。この生活がひょんなことから死ぬときが来るまで続けばいい、とハイラは本気で思っていたのだが、父親はそうではなかった。
 家の人脈を広げる手助けをしろとばかりに婚約者候補のリストを送ってきたのである。そのリストの中にレハトの名前を見つけた時、ハイラはたいそう驚いた。
 そしてハイラは、グレオニーが処刑されてから10年経っていたことを思い出した。

「どういった風の吹き回しですかね?」
 城の広間で顔をあわせてそうそう、ハイラは尋ねた。他の机で歓談している貴族や、仕事をしている使用人たちが、息を呑んでこちらの様子を伺っている。彼らはハイラとレハトの関係を気にしているわけではなく、レハトに見とれているだけだった。
「それは私の言葉です。貴方はきっと私を無視すると思っていましたから」
 淹れたてのお茶が入ったカップを唇から離して、レハトは言った。上級貴族の身分を得なければ、おそらく麗人として城に囲われていただろう美貌がハイラの眼前でまばゆく輝いている。
 十年の月日は伊達ではないなとハイラは感慨深く思ったが、弧を描く唇とは裏腹に冷ややかなままの目元を眺めながら、昔のような素直さはかけらも残っていなさそうだとも思った。
「とんでもない。一言二言会話しただけの私と結婚なさろうなんて、昔と変わらず慈悲深くていらっしゃる」
 同じようにお茶を飲みながら、ハイラはレハトの肩に目をやった。長く結われた髪や首周りの装飾の下にさりげなく目を凝らす。
 グレオニーが付けた傷は見えなかった。彼女と結婚するということは、その傷に触れるということだ。
 御前試合で殺意を持って寵愛者を切り伏せたとして処刑されたかつての仲間と、息子が関わりを持っていたことに関して、父親は十年も昔の話だろう、と一蹴した。縁談自体はハイラの家柄には分不相応といってもよいほどで、断る理由はどこにも無い。ハイラ自身はこの縁談に気乗りはしなかったが、戯れで出した鳥文の返事が色よく、舞い上がった父親に放り出される形でやってきていた。元より四男坊に決定権は存在しない。
 ハイラにはレハトの真意が汲み取れなかった。十年前なら手にとるようにわかったのにな、と思った。昔のことばかり思い出してしまうのは、年をとった証拠だろうか。
 野次馬たちが飽きるくらいには、ハイラとレハトの会話は弾まなかった。口先を弄するのはハイラの得意技の一つだったが、レハトにはまるで通じなかった。年頃の娘が好みそうな話を振っても相槌を打つばかりで話が進展しない。では何か聞きたいことがあるかと問えば、特にないという。
 いくら美人といっても、会話ができなければ花を鑑賞しているのと一緒だ。親父殿には申し訳ないが、どうやら破談になりそうだな…と思ったところで、お別れすることになった。
 帰りがてらに城内を散歩することになり、城門までの回廊を並んで歩いた。ふと訓練場のそばを通りがかった時、ハイラの心に邪な気持ちが沸いた。もう二度と会うこともないだろうし、グレオニーについて聞いてみようと思ったのだ。
 懐かしい場所なので覗いていきましょうと誘い、入り口に立って衛士たちの練習風景を眺めながら、ハイラは「レハト様はいつもグレオニーを探していましたっけねぇ」と振った。するとレハトは意外にも応えてくれる。
「貴方はいつも壁際に寄りかかって訓練場を観察していましたね。グレオニーとフェルツと…そういえばフェルツは、今でも私が訓練場に現れるとどこからか飛んできて、私を追い出すんですよ」
 ハイラが衛士を辞めた後も、フェルツは城に残って衛士を続けていたはずだ。何かしらの役職を得て活躍しているだろう実直な昔の仲間を思い返しながら、ハイラは「フェルツらしいですね」と答えた。
 レハトが思いの外流暢にグレオニーの名前を出したことにハイラはたじろいだ。まるであの事件などなかったかのように語る。涼やかな唇が、懐かしいなと小さくこぼした。
「彼のことを覚えている人は、もうほとんど城にいないのにね」
 訓練場に刃を潰した剣の鈍い音が響いた。
 ハイラは確かにこの中に居た。
 遠い昔のことだと思っていたが、あの音を聞いた途端、つい昨日の出来事のように思えた。くわしく思い出そうとすると、死んだグレオニーが過去と現在の境に立ってハイラをぼんやりと見つめ返していた。にらんでいるのか、哀しみにくれているのか、分からない。ハイラはグレオニーの顔が思い出せなかった。
 自分が感傷にくれる人間だったことにハイラは驚いた。
 ハイラの物思いは、回廊の向こうから聞こえた足音によって中断された。
 足音の中の一つが、曲がり角から現れた瞬間、弾けたようにハイラとレハトの元へ掛けてきた。お付きの人間が陛下! と叫ぶのも構わずに。ハイラは夢から覚めたように居ずまいを正したが、レハトは身動きすらしなかった。
「レハト! 来てたんなら顔くらい見せてくれてもいいじゃん」
「今日はヴァイルに会う用事じゃないからね」
 レハトがぴしゃりと言い放つと、ヴァイル国王陛下は子供のように頬をふくらませた。気のおけない友人へ向けるまなざしが、ハイラを捉えた瞬間鋭くなる。その時初めてヴァイルはハイラの存在に気がついたようだった。
「だれ? こいつ」
「私の夫…になる、予定の人」
「結婚!? 俺とするんじゃなかったの?!」
 ヴァイルは声を荒げると、レハトの肩を掴んだ。背後に立つ侍従たちの顔がこわばり、周囲に緊張感が走る。ハイラもついでに顔を強張らせた。
 2人の寵愛者は王位争いの中でも、周りの言葉に流されず心を通わせていたのは知っていたが、結婚したいと思うほどだったとは思わなかった。肩を掴まれたレハトは冷ややかに「無理」とだけ言うと、ヴァイルの手を掴んで下ろした。
「無理だって。聞いた? ひどくない?」
 拒絶されたヴァイルはレハトを飛び越えてハイラに同意を求めてきたが、ふさわしい言葉が見つからない。さすがに王相手に普段の軽口は叩けない。なんと言えばいいんだ。私の方が好みのようですよ、とでも? ハイラが言葉を濁して愛想笑いを浮かべると、ヴァイルは一瞬で興味を失ったらしい。
「つまんないね、こいつ。俺にしとけば?」
「ヴァイルはもっとつまんないから嫌」
「はー!? なにそれ、俺、王様なんですけど」
「王様だからやだ」
「えぇ~じゃあもう王様辞めるよ俺…いや、辞めないけど! そんな目で見るなって」
 さすがに侍従頭の視線に耐えきれなかったのかヴァイルは即座に言葉を否定する。しっしっと追い払うような仕草をするレハトにヴァイルは苦笑いを浮かべて立ち去っていった。あとに残されたのはレハトと、途方にくれたようなハイラのみ。
 レハトはハイラの耳元に唇を近づけるとそっと耳打ちした。
「私が結婚できない理由のひとつが、あれですよ」
 他にも理由はいっぱいあるんですけどね、と言いながらレハトが身体を離すとじゃあまたと言って回廊の奥へ去っていった。
 そりゃあ結婚できないわ、とハイラは思った。
 

#残照

 ハイラとレハトの縁談は結局、まとまったようでまとまらなかった。見合いの席からだいぶ3ヶ月ほど経ち、ハイラはレハトの思惑に気づき始めていた。
「私を人質に取ったわけですか」
 ソファーに横たわりながらハイラが問うと、レハトはそうですと言いのけた。別に睦言を交わす仲になったわけではない。むしろハイラの生活は以前よりずっと健全だ。
「私が結婚すれば、ヴァイルも諦めて他に娶るだろうというのが城のえらい人たちの考えです」
 レハトはレハトでソファーに座りながら、果実酒をあおっている。ハイラが持ち込んだものだった。上級貴族ともなると、下々の者が飲む酒は手に入りにくいとぼやくので融通してやった。
 2人は悪友のような関係に陥っていた。
 レハトが破談しない限り、ハイラは誰とも縁談を進めることはできない。
 どうにか機嫌を損ねさせ破談に持ち込ませるか、それとも取り入って婚約してしまうか。扱いに困った父親は一言、お前に任せるとだけ言った。
 縁談を破棄して逃げ出すことも考えたが、ハイラはそうしなかった。
 わずかでもレハトに対して情のようなものが湧き始めていたかもしれないが、それよりむしろ10年の間に閉じられたままの箱を開けたい気持ちが強かった。
「王配になればいいじゃないですか。歴史書に名前が載りますよ」
 果実酒の入った瓶をごろりと床に放り出すと、レハトは膝を抱えて座り直した。およそ上級貴族とはいえない素振りに、ハイラは失笑した。すかざすレハトが胡乱な目つきでにらんでくる。
「書面に載るなら別の職がいい」
「例えばどんな」
 ソファーから起き上がって床の酒瓶がを拾いながら問うと、レハトは足を伸ばしてぶらぶらと揺らして考え始めた。
「罪人」
「どんな罪状がお好みで?」
「自覚はない、けど…罪ならもう犯している。ねえ、分かってて聞いてるんでしょう。グレオニーのことだよ」
 ハイラの目をまっすぐ見据えながらレハトが言った。
 窓から入る風がレハトの前髪を揺らしている。箱が開けるときが来たのだとハイラは思った。ずっと、レハトは開けたがっていた。だから自分をここに呼んだのだと。
「懺悔を聞くのは神官の仕事では?」
「神官は罪を悔いて背負えと言ったきり、なにも教えてくれなかった。ただ神はすべてをご覧になっているでしょうと」
「それで十分じゃないですか」
 レハトは黙り込むと、ソファーから飛び降りて机から新たな果実酒の瓶をひったくって開けた。ハイラが止められる速さではなかった。止める気はなかったが…。
「ただ見てるだけなら、貴方と一緒じゃない。神は黙ったままだけど、貴方は喋れるんだから、なにか言ってくれてもいいでしょう」
 強い語気でまくしたてたレハトは、目を赤くしながらハイラに詰め寄った。
 酒臭さの中に冴え冴えとした香りが鼻をくすぐる。神と自分を比べるなんて神官が聞いたら卒倒するだろうが、今レハトにとって自分は神のようなものかもしれなかった。
「じゃ、聞きます」
「聞いて」
「どうしていつもグレオニーを探していた?」
「グレオニーと仲良くなりたかった」
「どうして御前試合に出たんです?」
「剣を交えて、認めてもらいたかった。私の強さに驚いてほしかった」
「そりゃ逆効果だ」
「わかってる。わかってたんだと思う。御前試合で勝ち上がって、それを報告しにいくたびに、グレオニーは苦みばしった顔をしていたもん」
「じゃあやめればよかったでしょうに、どうして…」
 ごとん、という音を立てて酒瓶が落ちる。次いでレハトが膝から崩折れると、そのまま泣き出した。
「私は、結局、何一つ、グレオニーに受け入れてもらえなかった。私はただ、グレオニーと仲良くなりなかっただけなのに。もう、グレオニーはどこにもいない。私が……」
 ハイラは泣きじゃくって床にうずくまるレハトの肩を掴んで抱き起こそうとしたが、肩に流れた髪の間から傷痕が覗いて動きを止めた。
 目をそらすと転がった酒瓶から酒がとくとくと流れている。自分を縛って、追い込んで、逃げ場所をなくした哀れな人間の鳴き声が部屋に響いている。
 ああ本当に、どこまでも似た者同士だな。
 …だから、すれ違ったんだろうけど。

 ハイラはレハトの肩を抱いてやった。父親が仕立てた一張羅が無残に引っ張られる。胸板に鼻水がこすりつけられ湿るのを感じたが気にしないことにした。
 威光を失った印持ちにやられたと言えば、立った目くじらも柔らかくなるだろうか? 
 湿ったレハトの髪に指を絡ませながら、ハイラは言い聞かせた。
「もういないんですよ、グレちゃんは」
「うん…」
「貴方が追い込んで、殺したんですよ」
「知ってる」
「手ひどく痛めつけられたのに、懲りないんですね」
「……」
「誰もそう言ってくれないから、言ってくれる人を探してたんですか?」
「そうだよ」
「鏡石に向かって一人でやってくださいよ。私を巻き込むなんて卑怯だ」
「ふふ…」
 ぐずぐずと鼻水を啜る音の向こうでレハトの顔がほころんだ。
 ハイラは失望にも似た気持ちを抱いた。こんな無意味な行いで救われるのはレハトの今日だけだ。明日も明後日もこうして過去に縛られた女を慰めるなんてごめんだ。性に合わない。そもそも一生付き合う義理はない。
 だが、ハイラはそう思いながらも、レハトの肩口に走る傷痕に指を這わせていった。


#来て来て!

 訓練場の入り口にレハトが現れて、きょろきょろと辺りを探していることにハイラは気づいた。目当ての人物は剣の手入れに集中して下を向いているので気づく様子はない。
 教えてやらなければ永遠にこのままだろう。
 仕方がないのでハイラは一つため息をつくと、グレオニーの肩を小突いて教えてやった。
「お、客、様、みたいだよ、グレちゃん」
「なんだよ、お客って…」
 顔を上げたグレオニーが声のする方に目を向けると、レハト様が小走りに近づいてきた。手には練習用の剣を持っている。何を望んでいるのかは明白だった。
「あ、レハト様、今日も練習ですか?」
「うん、相手して」
「ええと…」
 グレオニーは最近レハトが自分より剣技がうまくなっていることに気づき始めていた。普段は兄貴面をしているくせに、こういう所は末子らしい甘さが抜けていないのか、レハトの上達を素直に喜べないでいる。
「グレちゃんまさかとは思うけど、レハト様に負けるのが怖いの?」
「なっ──そ、そういうわけじゃ……」
「じゃあ行ってきてやればいいじゃん」
「そうだそうだ!」
「いやレハト様まで何言ってるんだ…いや、ですか」
 モニョモニョと言い訳しそうなグレオニーの背を叩いたのはフェルツだった。
「いいから行ってこいよ。考えるより動くほうが得意なんだからさ」
「ていうか、レハト様はもう相手してもらう気満々だけどね」
「あっ、居ない! 俺の剣も!」
 焦るグレオニーがきょろきょろと辺りを見回すと、レハトがグレオニーの剣を持って訓練場の真ん中に立っていた。
 さあ、来いとでも言わんばかりだ。ハイラがやれやれと肩をすくませると、グレオニーは観念したようにレハトの元へ駆けていった。レハトは待ちきれないとでも言うように満面の笑みで手を振っている。
「はやくおいでよ、グレオニー!」


おわり

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